「行ってくるね」のHandshake、「ただいま」のHug。


前回の記事の続きです≫


先日、9月20日-

「葉状腫瘍」と診断された日。


あの日から、ショップでは毎年ご好評を頂いている

「ZUKKINNU」のシーズンを迎え、ありがたいことにたくさんオーダーを頂け

それなりに忙しく過ごしていた。


そんな合間に、手術の方法や日程などを決めるためドクターとよく話をし

自分も納得できる方法を選択した。


私の場合、腫瘍のサイズは3cmと小さい方なのだが、葉状腫瘍の特性上

すぐに大きくなる可能性もあるということと、

いずれ、腫瘍の摘出をしなければならないもの。

とは言え、急いで手術しなくてはならないというものではないが、

私はサイズが小さいうちに摘出してもらう方を選んだ。


理由としては、手術の際に「全身麻酔」をすることの不安があったのだ。

私は先天性の脊髄損傷である関係もあり、

内臓系にまで様々な病気をかかえて産まれ、幼少期からこれまで

数え切れないくらい全身麻酔を使った手術を経験してきた。

そのため、全身麻酔手術をすること事態は何の恐怖もないのだが、

今回不安になったのは、13年前に腎臓移植をしたことにあった。


全身麻酔を使用することにより、移植した腎臓に影響が出るのではないか、という不安。

手術方法を決め悩む間も、腎臓の方のドクターに相談。

やはり、移植腎へのリスクがゼロではないが、今の私の腎機能なら

大丈夫ではないか、との話。


それでも、ゼロではない。

13年前、夫から贈られた大事な命の絆。


それを守るために、「局所麻酔」での手術をすることを迷わず選んだ。


腫瘍3cmという今ならば、局所麻酔で取れるギリギリのサイズだということで、

すぐに手術の予約をした。


11月2日、いよいよ手術。

13時からの予定が、他の患者さんの処置が長引いたらしく14時30分頃

ようやく名前を呼ばれ「行ってくるね。」と夫に告げオペ室へ入る。



中に入ると担当の若いオペナースと、執刀医が挨拶し、オペの流れを

簡単に説明してくれる。

てっきり主治医が執刀するものと思っていたが、同じチームだという

初めて会うドクターだった。

これまで主治医と信頼関係を築けていただけに、ここで一瞬動揺したが、

私のこれまでの病歴や主治医と話して決めたこと、心配していたことなど

きちんと伝わっており安堵する。


何より、このドクターもとても話しやすく、時に軽いユーモアを交えて

話してくれたので、オペ室独特の冷たい空気の流れが少し暖色系に

変わったように感じられリラックスできた。


手術のベッドに横たわり、心電図・血圧計・パルスオキシメーターなどが

とりつけられると、いよいよ始まるんだ、と深~い深呼吸が自然に出る。


手術着を脱いで上半身を出すと、幼少の頃から幾度となく経験してきた、

私の生きた印である何本もの手術の傷跡が露わになる。

ドクターは、腹部にあるその傷たちにそっと触れ、

「あぁ…しっかり生きてきたんだね。」とつぶやく。

それはマスク越しの小さなつぶやきだったが、私の耳にはきちんと聞こえてきて…

あれ?おかしいな?全く泣いているつもりはないのに、耳の穴に温かい水滴が

流れてきたのを感じた。


「これじゃあ、この後も何が何でも生きるしかないよね(笑)よし、僕も頑張るから。」

マスクでかくされていて、まだその目しか見たことのないドクターの瞳は、

しっかり私の瞳の奥までを見て「行くよ。」と言った。


自分の手のひらに、緊張とは違う力が入り「よし。」と心でつぶやくと

「では、麻酔の注射打ちます」と声がきこえ、左胸の数カ所にチクッと注射針がさされる。その後、ほぼ痛みもなくオペは行われていった。

「今切ってますよ」とか「ちょっと引っ張りますね、痛くない?」など

そのたびに声をかけてくれるので、不安はほぐれる。

時折、チョキチョキ何かを切る音や、おそらく血が流れているようなあたたかさを

感じると、その光景を想像してしまい気持ちが揺らいだが、そんなときは

チェレステとコバルトのことを思い出すようにした。


なぜか、むかし行ったワンコOKのシュラスコの店で、次から次と運ばれてくる

巨大な肉を、目玉が飛び出すんじゃないかという勢いでそれを見つめるチェレステの顔が

浮かんできたり、いつもコロコロ転がり回っては、可愛いでしょアピールしてくるくせに、転がりすぎて起き上がれなくなっている鈍くさいコバルトを思いうかべ、

手術中なのにひとりでにやけてしまった。

顔のあたりにカーテンがかけられているのでバレてない(笑)


そんなことを考えていると、ズキッ!と痛みがやってきた。

「痛いかな?あと一息で取り出せるよ。ちょっと麻酔足しておくので、一踏ん張りね」

後もう少し…。叫ぶほど痛くはないが、なんかいやだ。

グニグニと押されてる感。肉を切られているような音。ちょっと手に力が入って

グーパーしてると、華奢な両手が私の手をそっと包み込んだ。

優しく声をかけてくれたのはオペナースだった。


人の手というのは、本当にいろいろな感情が伝わるものだ。

自分も、言葉にはできない心を伝えたいとき、よく握手をするのだ。

ナースのあたたかい優しさに、本当に救われた。

ぎゅーっと握りしめちゃってごめんね。


「よーしっ!取れた!あとは傷口縫ったらおしまい!」

カーテンが開き、「終わりましたよー」と、マスクを外したドクターの顔。

ようやく初めて拝見できたお顔は、優しい笑みを浮かべていた。


手術時間は、だいたい40分程度で終了。

8月のあの乳ガン検診以来、ずっと私を不安にさせていたヤツの姿を見せて貰う。

3cmと聞いていたが、思いのほか大きな薄いピンク色の物体だったのは、

今後、できる限り再発がしてこないよう、ちょっとだけ周りの部分を余分に

取ってくれたから。

「こういうの、見るの大丈夫でした?」とドクターに聞かれ、「ええ、全く大丈夫です。

この手術のあと、頑張ったご褒美に夫に焼き肉をご馳走して貰う予定なんで。」

と話すと、ドクターはくしゃっと笑う。

「元気みたいだね、良かった。術後検診で、またお会いしましょう。」と

立ち去ろうとしたとき、「先生、握手してください」と言う私に、彼は力強く

握手を返して下さり、オペ室を出て行った。


今回の手術は局所麻酔だったので、日帰り。

私も、待っててくれた夫も空腹だったので、約束通り肉をたらふく食べてから帰宅した。


玄関のドアを開けると、待ちくたびれた我が仔たちが、パパのGoサインで

ドドドーっと走ってきて、私に飛び乗ったのはコバルト。

乗り損ねたけど、必死にしっぽを振って私におかえりを伝えてくるチェレステ。



「ただいま、もう大丈夫だよ。」




今回、8月に受けた1年ぶりの乳ガン検診で発覚した「葉状腫瘍」。

当初はガンではないかと不安な日々を過ごしていたが、遠く離れた場所から

毎日のようにメッセージをくれる妹や、いつでも気にかけてくれ

時に笑わせてくれた友人たちに感謝したい。


そして、どんなときも一番そばで私を支えてくれるキミたちと、パパに。

ありがとう。



・・・しばらく左側、痛みそうだから

明日もおにぎり、作ってくれる?


ショップを臨時休業させて頂いておりましたが

11/5(月)より、元気に再開いたします!

見守って下さったみなさま、ありがとうございました。

これからも、宜しくお願い致します。


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